蜜事は研究室で
「……で、それが今回の発明品ですか?」



ガッチリ右腕を捕らえられたまま、わたしはシツチョーの手元に目を向けた。

なんだかうれしそうに、彼は頷く。



「ここしばらく手をかけてて、ようやく今朝完成したんだ」



言いながらシツチョーは、わたしの目の前でそれを軽く振って見せた。

透明な小ビンの中に、ピンク色の液体。……あやしい匂いプンプンである。



「はっはっは、これぞ俺の最高傑作と呼ぶにふさわしい……!」

「………」



『最高傑作』。

もうお気付きの方もいらっしゃるかもしれないが、“過去に作ったものより良いものを作る”をモットーにしているシツチョーは、発明品をお披露目するたびにこの言葉を口にする。(ハイここ、『カッコイー!』とか思うところじゃないですからね?!)

そしてこの言葉があるからといって、今わたしの中にある多大な不安が、まったくこれっぽっちも拭えるわけはなくて。



「聞いて驚け、シーナ」



やはり勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、シツチョーがグッと顔を近付けてきた。

わたしはのけ反って、彼との距離を保とうとする。



「日下部 帝オリジナルブレンド! その名も『ドキドキ☆惚れ薬』だ!!」
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