蜜事は研究室で
「顔が熱くなってきたな。呼吸は? 体温は? 動悸は?」



顔、だけじゃない。なんだか、からだ全体が熱い。

まるで尋問するかのような言葉に、目の前の人物を睨みつけた。

ふ、と、シツチョーが笑う。



「──どう? すきになった?」

「……ッ、」



ドクン、と、心臓が大きくはねた。

自由な左手を、きつく握りしめる。


……こんな、ヤツ。



「シーナ?」



こんなヤツこんなヤツこんなヤツ!!



「……すきに、なるかぁ~ッ!!」

「ぅわっ」



ドーン! と思いきりシツチョーのからだを突き飛ばして、壁際から抜け出る。



「コラ……っシーナ?!」



床に落ちたメガネを、拾うことも忘れずに。

そして、そのまま──わたしは後ろを振り返ることもなく、研究室を飛び出した。
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