蜜事は研究室で
追いかけっことその結末
「はぁ……」



あてどもなく走り回ったら、いつの間にか自分の教室の前にたどり着いていた。

……探しには、来ないと思うけど……でももし来たときにすぐバレそうだし、ここには隠れない方がいいよね。

廊下の壁にもたれながらあがってしまった呼吸を整えて、最後にふぅ、と息をつく。



「………」



落ち着いてみると、思い出してしまうのは、先ほどあった出来事で。

──事故、みたいなものとはいえ……シツチョーとキス、しちゃった。

わたし、初めてだったのに。それがあんな、実験みたいなこと……。


じわり、1度は引っ込んだはずの涙がまた浮かぶ。

ゴシゴシと目元を擦っていると、不意に背後から、肩を叩かれた。



「……!」

「あ、やっぱり。椎名じゃん」

「ッえ、あ、工藤、くん……?」



驚いて振り向いた先にいたのは、中学のとき同じクラスだった、工藤くんだった。

彼とは今違うクラスだけれど、廊下で会ったりなんかすると、普通に会話する仲だ。

わたしは相手がシツチョーじゃなかったことに安堵して、はーっと深く息を吐いた。
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