蜜事は研究室で
「あ、……もー……」



なんだろう、今日は厄日なんだろうか。

このクマのマスコットはシツチョーと一緒に帰ったときに、1度だけ寄り道したゲーセンで取ってもらったものだ。

あれかわいい、とわたしが何気なく言ったら、思いがけなくシツチョーがチャレンジしてくれて。

角度がどうとか距離がどうとかブツブツ呟きながら、なんと1回で、見事ゲットしてくれて。

……あれは、うれしかったなぁ……。


当時のことを思い出して切ない気持ちになりながら、わたしは数歩踏み出す。

マスコットはコロコロと転がって、パイプベッドに下に入り込んでしまっていた。

しゃがみこんで、手を伸ばす、と。



「シーナちゃんいらっしゃ~い」

「うきゃあああああ!!」



なんとベッドの下には、懐中電灯で無表情な自分の顔を照らしたシツチョーが、こちらを向くかたちで横たわっていた。

わたしはあまりの衝撃に悲鳴をあげて後ろへひっくり返り、ガン! と勢いよく、床に頭を強打する。



「あっ、おい、シーナ!」

「ふぇ~……」



そしてそのまま、意識を失った──。
< 24 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop