蜜事は研究室で
市松とシーナ
「ふわ~」



ようやく無駄に長い帰りのSHRが終わって、わたしは席に座ったまま思いきり伸びをする。

するとクラスでも仲の良い由佳理が、早くもかばんを持って話し掛けてきた。



「ね、桃。あたし今日部活ないんだぁ。よかったらカラオケ行かない?」

「あ、行きたい!」



彼女の言葉に、間髪入れず本音がもれた。


……うん、行きたい。

だけど、……だけどぉ~……。



「よしっ、決まり! じゃあ行こ~」

「……あ、待って由佳理!」



すでに歩きだそうとしていた由佳理を、若干慌てながら呼び止める。

ん? と振り返った彼女に、しどろもどろ言葉を続けた。



「えーっとあの、行きたいのは山々なんだけどぉ……」

「あ、ごめんもしかして用事あった? なら仕方ないやぁ」

「うーん……用事というか……」



煮え切らないわたしの様子に、由佳理が首をかしげる。

そうこうしているうちに教室の後ろ側の出入口付近が、にわかにざわついた。
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