deep forest -深い森-
梨乃 2
そこは、静かな部屋だった。


広い部屋の中には、天蓋のついた大きなベッドが一つだけあり、そのベッドの真ん中で、胎児のように丸くなって、梨乃が眠っている。


時折寒さを感じるのか、白い繻子の裾を眠りながら引き下げている。


部屋中に漂うのは、『伽羅』の香り。

梨乃は、『客』を待っていた。


初めは、嫌で嫌で仕方がなかったのに。


今では、こうして、次の客との間に身体を休める事も出来る。


自分が汚れてしまったのか、それとも自己防衛の為の逃避なのか。


悩んでも、答えはでなかった。
答えが出る頃を見計らって、蓮實は客を入れてきた。


まるで梨乃に、考えても無駄だと、念を押すかのように。


けれど梨乃は、いつまでも考え続ける。


どうして自分が、こんな風になってしまったのか。


どうして自分は、生きる事を放棄しないのか。


どうして自分は……





蓮實を憎みきれないのか。





蓮實を慕って泣いたあの頃から、まだ五年しか経っていないというのに。

どうして…


どうして……




眠りの海の奥へと、深く深く沈んでゆけば。





答えは、見つかるだろうか?
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