その衝動の果て…【完】
10歳の頃

突然連れてこられたその日

ふと目が覚め、布団から起き上がる。辺りは真っ暗だった。

寝つきはよく、こんな時間に目覚めることはないのに…

突然目の前に真っ白な光がさした。

その眩しさに目を細めていると…

『来て』

という声が頭の中に響いた。それと同時に光の中から手だけが出てきて…

無理矢理に腕を引かれた。

僕は目を伏せ、わけのわからないままどこかに引きずり込まれる。



しばらくして辺りを見渡すと…

それはいつか見たことのある光景だった。


何なんだ?誰なんだ?驚きつつ目を凝らしていると、


『約束の10歳だろう?』

その低い声はさっきと同じで耳からではなく、心に直接語りかけていた。



そして、目の前には0時を過ぎた時計がちらっと見えた。

確かに日にちをまたいだ今日は…

僕の生まれた日。

『確かにそうだけど…

何なんだよ』

不機嫌に立ち尽くす僕の目の前に、黒いローブを身にまとった男が現れた。

余りにも非現実的な出来事なのに…

僕は何もかもがおかしくなって声を上げて笑った。

こういうことなのか?何様なんだ?

それなのに目の前の勝手な男は無表情のまま目を伏せ

『所詮離し身(はなしみ)のくせに…』

と僕を罵った。
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