その衝動の果て…【完】
『離し身って何だと思っただろ?

お前は僕の一部を切り離して作った形代(かたしろ)。

所詮お前の存在は僕の手足のようなもので、ニセモノでしかない…』

ほくそ笑む表情。何が言いたいのか訳が分からなかった。

僕はこいつの一部?ニセモノ?その言葉が僕を余計に迷宮に誘う…


アイツは母の中にもオヤジの中にもいた。

それなのにいくら探ろうとしても…

アイツ自身の事、アイツの正体はわからなかった。

でも間違いなくアイツは僕の根幹に関わっている…


だからこそ…

この機会を待っていた。今こそ、僕の持つ疑問に答えてもらう。

一度会った時にあらかじめまた会おうと予告されていたとはいえ、

突然のことに事態が飲み込めない。これじゃ完全にアイツのペース。


その感情すら読まれたようにアイツは口角を上げ不敵な笑みを浮かべた。

黒いローブのフードが落ち、顔がはっきりと見えて、その右頬に浮かぶエクボ…

それは僕の顔と同じ場所にある。その事実が意味することは…

カノジョの記憶の中にあった。おそらくアイツは…

僕の父親。でもただそれだけじゃないような気がした。

現れ方も、消え方も、人間の所業じゃない。こいつはいったい何者なんだ?

こいつは僕にとってどういう存在なんだ?

だが、僕がわかっていたのは表面上の事実で、

その奥にはもっと残酷な意味が秘められていた。



< 14 / 30 >

この作品をシェア

pagetop