その衝動の果て…【完】
でもうなじに僕が付けた痕を見ると、僕の中の欲望が頭をもたげ、躰にもその証が甦る…

あと少しで、あともう少しでこの手に抱けたのに…


その想いを見透かしたのか、カノジョを抱いたままのオヤジが殺しそうな瞳で僕を射抜いた。

そして、どこから出ているかわからないくらい低い声で

「お前はイカれてる。頭がおかしいのか?

俺とは血が繋がっていなくても、お前は間違いなくほのかの子だ。

自分が何をしようとしたのかわかっているのか?」


そんなことわかってる。誰からも許されない感情だってことも。だから、何だ?

わかればこの感情が止まるっていうのか?止められるのか?

どうやったら止まるんだ?どうせお前になんかこんな気持ちわかりやしない…

僕はオヤジから視線をそらし、

「お前にわかるわけないだろう…」

吐き捨てるように言葉を絞り出した。


オヤジはそれ以上何も話さず、僕の前を通り過ぎ、夫婦の寝室の方へ歩いていく。

そうこの二人は夫婦。そして僕はカノジョの息子…

その理不尽な事実を、僕はどうすることもできない。

そこにあるのは越えることのできない壁。その想いは過ち…


オヤジの背中を見送りながらこの持ってゆき場のない感情を

どうしたらいいのかわからなくなり、

僕はその場にしゃがみ込んだまま動けなかった…


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