眼鏡越しの恋


私の鼓動は壊れてしまうんじゃないかってほど、暴れている。
こんなに近い距離なら、その音が瀬能君に聞こえてしまうかもしれない。
恥ずかしくて堪らないのに、どうしても彼から目を離せない。


「前髪ももう少し短くてよくねぇ?」


そう言って、瀬能君が私の目にかかる前髪を梳くように撫でた。


「――――っ!」


私はびっくりして、ガタッと音を立てて椅子を引いて瀬能君から慌てて離れる。
メガネをかけていない私には顔一つ分離れたこの距離で、もう瀬能君の表情が見えない。
だから今、瀬能君がどんな顔をしているのかわからない。


必要以上に反応して、あり得ないくらい真っ赤になってる私を、今、彼がどんな顔をして見ているのかわからなくて、余計にあたふたとしてしまう。


「せっかく美人なのに、隠してたら勿体ないとか思わねぇの?」


「は?」


瀬能君の口から聞こえた言葉の意味が理解できなくて、私はポカンとして訊き返した。


< 32 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop