花と蜜蜂
良い感じの人を探して。
勇気を出して連絡交換して。
それから、デートを重ねて、告白して。
キスして、エッチして……。
無理…。
それを一から始める体力、今のところ見当たらない。
面倒だと思ってしまう。
結婚かぁ……もしかしたら、あたしも一生できないかも。
真由香みたいに、手に職をつけようかな。
資格取って……。
と、その時だった。
頭上のライトが遮られ、手元のグラスが暗くなった。
誰かが背後に立っている。
顔を上げて振り向くと、背の高い男の人があたしを見下ろしていた。
え、誰?
お客さんだろうか。
逆光になった彼の顔ははっきり見えないけど、近くにいるだけでふわりと甘い香りに包まれた。
これは、香水?
首元にぶら下がる緩んだネクタイ。
高価なネクタイピンが、きらりと光る。
スーツ姿の彼は、あたしの顔を見てその口元を緩めた。
「最初からじゃなきゃ、恋愛出来んの?」
―――え?
低くて甘美は声色。
彼はバカにするように、クッと笑っていた。