花と蜜蜂
気が付けば大晦日。
気が付けば、新年。
結局今年のお正月も、忙しくて実家に帰れなかった。
……て言うのは、口実。
たかだか普通のOLが、お正月がないほど忙しいわけがない。
帰って、結婚話をされるのが疎ましかったからだ。
うちの両親は、あたしにサトシと言う彼がいたのは知っていた。
長い付き合いだって事も。
だから、そのサトシと別れ、結婚がさらに縁遠くなった事が言えずにいたんだ。
きっとうちの両親の事だ。
それならと、お見合い話を持ちかけるだろう。
少しの連休が明けて、あっという間にいつもの日常が戻ってきていた。
―――カランコロン
涼しげな鐘の音。
あたしはいつものお店で、真由香を待っていた。
先延ばしになっていた『報告』をするためだ。
サトシとダメになった事は、なんとなく伝えてあった。
すぐにでも会いたがっていた真由香だったけど、バリバリのキャリアウーマンの真由香の都合がつかず、今日になったというわけだ。
このお店、好き。
最近知ったんだけど、アンティーク調の落ち着いた雰囲気。
今までよく行っていた、足を崩せる居酒屋とは違って、バーテンダーがいて、カウンターの上にはキラキラ光るグラスが、いくつもぶら下がっていた。
流れるBGMもジャズが主流で、話し声の邪魔をしなかった。
「花、お待たせ」