蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
一方夏彦は、救急車に乗せられていた。

救急隊員によって右脚の応急処置を施され、これから病院に搬送される。

「大丈夫ですか、南部さん…」

雛罌粟が心配そうに見守る。

「問題ない、見た目ほど傷も深くないらしいし…雛罌粟ちゃんは怪我はないのか」

ストレッチャーに寝かされている人間が他人の怪我の心配とは。

滑稽な話である。

はにかみながら頷く雛罌粟。

「そうか…よかった…それから」

救急車に乗せられながら、夏彦は言う。

「君はそうやって笑うとなかなか可愛い…体で誘惑するより、そういう笑顔で探偵を篭絡してやるといい」

「!」

裸を見られても無表情な雛罌粟が、夏彦の一言で耳まで赤くなった。

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