蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
俄かには信じ難い話だった。

こんな狭いバスタブの中に、そんな無数の腕が潜んでいるというのか?

仮に雛罌粟が引き摺り込まれたとして、こんな狭い浴槽ならばすぐに上がってこれる筈…。

「そ、それは…」

俊平の声が少し小さくなる。

「き、きっと…この建物には悪い霊か何かいて…雛罌粟さんはその霊に、どこか別の世界に連れて行かれたんじゃ…」

「やめてよっ!」

話を聞いていて恐ろしくなったのか、冴子が声を上げて耳を塞ぐ。

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