不滅の妖怪を御存じ?
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ゴウゴウと風の音がひどく、激しい雨が戸に打ち付けられる音がする。
ガタガタと物音。
ここまでひどい嵐の日にも、藍と弓月の銭湯にはいつも通り十人の客が来た。
藍への態度も全員冷たい。
「藍、親子丼二つ、頼む。」
弓月がカウンターにやってきてそう注文してきた。
彼の隣にはムッツリした顔のままの客。
弓月の手には焼酎が握られている。
今日は客と語り合うつもりらしい。
「呑みすぎないでよ。」
「分かっておる。」
経営者なのだから仕事をしろとも思うが、客の接待も仕事のうちらしい。
弓月と客の二人はカウンターに座り早速呑み始める。
酒が入ると弓月は饒舌になる。
藍は肉を一口大に切り分けながら二人の会話に耳をかたむけた。