不滅の妖怪を御存じ?
目的地に着いたのは、それから二十分ほど歩いた後だった。
開けた場所があり、竹内蛍は早速望遠鏡を設置し始めた。
「私ちょっとその辺散策してくるね。」
「了解。」
望遠鏡をカチャカチャといじり続ける竹内蛍の背中に向かって藍はため息をつく。
集中すると彼は一切人の話を聞かない。
さっき藍が言ったことも理解していないだろう。
まぁいいか、と思い藍は木々が鬱蒼としている場所に足を進める。
この間の嵐のせいで横たわった木々につる草や種種の植物が絡まり、何か巨大な生き物のようだ。
のっそりと動き出しそうな。
この山には何度か来たことがある。
全部竹内蛍に連れてこられたようなものだ。
望遠鏡を設置し、たいしてキレイでもない夜空を見上げる。
月に一度の頻度で竹内蛍はそんなことをしている。
ここは虫も多いだろうに、家でやればよいものを。
強い風に飛ばされたのか、赤黒い木の実が足元にいくつか落ちていた。
「星や宇宙は勿論好きだよ。でも俺にはもっと興味あることがあるんだ。」
机いっぱいに場所をとる大きな星座図鑑を広げていた竹内蛍が言った数ヶ月前の言葉を思い出す。
あの頃はまだ高校生活が始まって一ヶ月も経っていなかった。
だが、竹内蛍と藍はすでに変人というくくりに入れられ、クラスメイトから遠巻きにされていた。
藍は小中学校と似たような扱いを受けていたので気にならなかったし、竹内蛍もさして気にしていなかった。
二人とも、変人扱いされるのには慣れっこだったのだ。