不滅の妖怪を御存じ?
「有田は廊下をやけにゆっくり歩くイメージがあったからなんか意外だ。」
「それは、皆が速すぎるんだよ。なんであんなぎゅうぎゅうの人ごみをスタスタ歩けるのか分からない。」
ピタリ、と。
竹内蛍が履いている目に焼きつくような鮮やかな黄色いスニーカーが止まった。
思わず顔を上げる。
藍の方を振り返った竹内蛍の顔に、怪訝そうにこちらを見つめる目があった。
「学校の廊下って、そんなにぎゅうぎゅうか?」
「ぎゅうぎゅうじゃん。生徒じゃない人たちもたくさんいるし。」
竹内蛍は肩にかけた大きな鞄を持ち直した。
「俺、有田が見る世界を見てみたいな。」
竹内蛍はそう言うと藍に背を向け再び歩き出した。
どういうことなのか聞きたかったが、めんどくさくなってやめた。