不滅の妖怪を御存じ?
今、桜は鬼道学園本部の会議室に一人でいる。
他の重役の人たちは皆全国各地への対応のため電話やメールの処理で出払っている。
桜も何か手伝おうと思ったのだが、大人しくしててくれと必死に頼み込まれた。
無理もないだろう。
無事な継承者は桜一人だけだったのだから。
千秋は鬼道学園を辞め、佳那子と紫月は足をひねり、頭を打ち、で医務室に。
継承者三人の戦力を欠いたこの状況で、理事長はどうするつもりなのだろう。
桜はもう何度も考えたが、良い打開策は浮かばない。
そもそも鬼道学園自体が結界や札を使い守りに徹する受け身な組織だから、打開というのは難しいのだ。
むしろ、自衛しかできないと言ってもいいだろう。
無理矢理にでも状況を変えるには、ある程度のリスクを覚悟で博打にでるしかない。
難しい顔をして桜が黙っていると、ピロリンとテレビから速報の音がした。
『速報です。昨晩に続き、またもや異常現象が発生しました。全国各地の沿岸部で、海面の急速な上昇が観測されました。各機関では昨晩の木の成長との関連を調べています』
アナウンサーが忙しなく紙をめくり口を動かす。
騒然としたスタジオの映像が切り替わる。
沿岸部、海。
そこまで連想して、桜は嫌な予感がした。