不滅の妖怪を御存じ?
「人に情がうつったか」
「まさか。んなのあるわけねえだろ」
人に情など、あるわけがない。
弓月に利用されている有田藍。
ほんの一瞬だけ、都合が良かったから一緒にいた人間。
けれど自分も天狗にいいように利用されるのは嫌だったから離れた。
それだけのことだ。
そういえば、ダンは藍から離れる様子はなかったなと思う。
あの異様な妖怪は、妖怪とは思えぬほどに人である藍に懐いていた。
あれも不思議な奴だったな、と有明は思う。
「味方になることも情」
ボソボソと、誰に向かって言ってるのか分からない川赤子の声。
「そしてまた、敵になりたくないと思うのも、情」
有明は顔を上げる。
しっとりとした川赤子の目と目が合った。
「何考えようが別に構わねえけど、そんなんじゃねーからな」
「己が認めずとも、何らかの思いは在る。お主の行動が全てよ」
それだけ言うと、川赤子はとぷりと沈んだ。
川の底でじっと息をひそめるようだ。
追いかけて訂正するのも癪なので、有明は一つ舌打ちするとさらに川下へ進んだ。
ゴォォッと水が勢いよく身体を運んで行く。
生き残ってやる。
自分に言い聞かせるように呟く。
例え九木と人間が共倒れしたとしても、俺は一人で生き残ってやる。
昔はあんなにこだわっていた竜宮城を継ぐことも、今ではどうでもよく思える。