anjel
普通、ふられたときの話って、忘れたいものでしょ?
なのに、忘れないで覚えておきたいくらい、綺麗な思い出。
そんな思い出を慈しむように話す麻衣ちゃんの顔がすごくキレイで。
これは、他のみんなにも聞いて欲しい。
そう思ったんだ。
「…あの、どうでしたか?」
歌ってしばらくしても、何も話さない先輩たち。
…良くなかったのかな。
やっぱり、作曲まではやめたらよかった……
ギターをギュッと握りしめた、その時。
「…どうしよう。俺、泣きそう!!」
目をウルウルさせる亮くん。
「え?」
「女子の気持ちとか分からなかったけど、幸望ちゃんの歌聞いて少し分かった気がする。」
「奏ちゃん…」
「…相変わらず、人に届けるのが上手いな」
翔が、褒めてくれた…!
いまだに何も言わないみっくんを見る。
すると、私の顔を見て優しく笑う。
「メロディと歌詞は、幸望ちゃんの考えたものでいこう。コードは……とりあえず俺たちで考えよっか」
やった!!
「ありがとうございます!!」
私の想い、ちゃんと届けられた…!
「確かに、ところどころメロディとコードあってなかったね」
「…初心者にしてはまずまずだろ」
「まあまあ!幸望りんほんとよかったよ♪」
みんなからの嬉しい言葉に、
思わず泣きそうになる。