anjel
話している時、
やっぱり泣いてしまった私は、
うまく言葉が出せなくて、すごく時間がかかってしまった。
まだ明るかった外が、もう赤く染まり始めている。
翔輝は最後まで真剣に話を聞いてくれた。
「…で、帰って来たの……」
涙をぬぐい、そう言うと。
「いたっ!?」
翔輝にデコピンされた。
おでこを抑えながら、翔輝を軽く睨む。
なんでデコピンされなきゃいけないのよ…
「なんでちゃんと話聞いてこなかったんだ?」
…え?
「先輩たちの話。なんでちゃんと聞いてこなかったんだ?って」
「だ、だって……怖かったんだもん…」
言えない理由、聞きたくなかった。
ううん。
聞けなかった。
「もし、私のこと、信用してないから言えないんだ、なんて言われたら……」
それこそ、私が私でなくなる気がして。
怖くて聞けなかった。
「じゃあ、」
翔輝が口を開く。
「幸望はそんな事思うくらい、先輩たちの事信用してないってこと?」
「え?」
「"自分のこと信用してないかも"って思ったんだろ?それって、先輩たちの事疑ってるってことじゃねーの?」
疑ってる……?
「違うよ!私は、嫌われるのが怖くて……」
「嫌われるのが怖いから、疑うわけ?」
「…」
「今までの先輩たちとの思い出を振り返って、本気で信用されてないって思ってる?」
今まで……
初めてバンドの話をした時。
ボーカルとしてバンドのメンバーになった時。
学祭で団長した時。
「…ううん」
先輩たちは今まで、ずっと、
「私のこと、信用してくれてた。」
そうだよ。
先輩たちは、いつも私のことを信用してくれてた。
なのに、私………
「じゃあ、明日ちゃんと話聞けよ?」
もう大丈夫だろ?と私の頭を撫でる翔輝。
「…うん。」
頷く私を見て、満足そうに微笑む翔輝の顔は、本当のお兄ちゃんみたいで。
「これから翔輝のこと、お兄ちゃんって呼ぼうかな」
「は?」
「ウソウソ。冗談だよ」
ありがとね、翔輝。
そう言って微笑んだ。