君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
ランチから戻ると、フロアがなにやらざわついていた。
総務部が、デスクや電話、ケーブルの設置に来ているのだ。
「今日の午後から来るんだって、新しいチーフ」
隣席の高木さんが教えてくれる。
「7部の方でしたっけ」
「そう、メディアのチーフやってる」
7部は確か、郊外型の家電量販店のプロモーションを担当しているところだ。
この会社の営業部門は、現在21個の「局」に分かれていて、その中でクライアント別に「部」に分かれている。
局内のクライアントは、すべて利害関係にない企業が集めてあって、その間での営業員のスライドは、そんなに珍しくない。
競合関係にあたるクライアントは、必ず別の局が担当し、局間の隔たりは、もはや別会社といっていいほどだ。
クライアントの利益や機密に直接関わる仕事なので、自然とそういう体制になる。
たとえば私のいるところは、第11営業局第6部。
ちなみに局も部も、番号が若いほうが上位というわけでもなく、ただの整理番号だ。
さて、なぜこの6部に新チーフが来るのかというと、製品チームのチーフだった春日部さんが今月で退職するからだ。
「あの制作会社に、顧問として入るんだって」
「年収、倍だね」
そんな噂を耳にした。
きちんきちんと仕事を進める人で、メディアチームのチーフだった新庄さんと双璧をなして、この部署を引きしめていた。