君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「空港の案件が、とれたんですよ」
「新設ターミナルのか、やったな」
火をつけながら、感心したように眉を上げる。
あの大型案件は、新庄さんがいた頃から、企画としてあった。
実施は6月。
来期も、やることがたくさんある。
「そうだ、新庄さん、これ」
思い出して、延び延びになっていたプレゼントを、今ごろ渡す。
いつからか、渡すこともあきらめて家に置きっぱなしだったので、ついに月までまたいでしまった。
案の定、新庄さんは意味がわかっていないようで、受け取りながらも、不思議そうな顔をしている。
バレンタインです、と説明すると、ああ、と納得して、サンキュ、と言った。
「ものすごく早い誕生日かと思った」
「誕生日は、さすがにもう少し、ちゃんとしたものを贈りたいです…」
別に気にしなくていい、と言いながら、細長い黒の箱をためつすがめつする。
イタリアのメンズブランドが展開している、ドルチェラインのチョコレートだ。
新庄さんの腕時計が、ここのブランドなのを知っていたので、ちょうどいいと思って選んだ。
「いい趣味してるな」
こういうものを見ると、思わずクオリティや材質をチェックしてしまうのは、職業病だろう。
開けていいか、と訊いてくるので、もちろんと答える。