君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「なんか、あったのかなあ」
その夜は、久々に彩と飲みに出た。
雑誌社は2月に決算のところが多いため、雑誌局の彩は今わりと忙しいはずなんだけど、向こうから誘いがあったので喜んで応じた。
ところがだ。
「ふうん」
こういう話には必ず食いつくはずの彩が、何かおかしい。
どこか上の空で、ずっと何かに気をとられている感じだ。
「ね、どうしたの。なんか変だよ」
心配になって、たまらず言うと、ごめんごめんと笑う。
「いや、あのさあ」
さっきからこうだ。
言いかけてはやめる。
私と彩は、同期でも一番仲がよく、しょっちゅう一緒にいるけれど、実はお互いの恋愛事情をほとんど知らない。
いちいち報告しあってはしゃぐ歳でもないし、性格のせいもあるだろう。
特に彩は秘密主義で、進行中の恋愛については、絶対に口を割らない。
終わった後に、どれだけダメな男だったかを教えてくれるのが、いつもの流れだ。
その彩が、何か言おうとしている。