君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「彩が、おかしいんですよ」
「いつも、比較的そうだろう」
土曜日、久しぶりに新庄さんと一日過ごせることになった。
昨日、本当に偶然エントランスで行きあい、週末の話になって、空いてるならどこか行くか、と誘ってもらえた。
たぶん、あの時会わなかったら、わざわざ電話やメールで誘い出してくれることはなかっただろう。
そんなもんだよね。
嬉しい反面、まだまだ微妙な距離なのを実感する。
「そういう意味じゃありません」
「知ってる」
もう…。
オフの日の新庄さんは、どこか緩い。
「海が見たい」という私のリクエストに応えて、車は半島の海岸線を走っていた。
遠いと思いきや、都内の私のマンションから、2時間もかからない。
2月に入ったというのに、上着がいらないくらいの上天気で、まさにドライブ日和だった。
「悩んでるっぽくて」
「仲いいんだな」
「新庄さん、同期は?」
途中で買ったアイスコーヒーにストローを差し、新庄さんの分を差し出す。
手渡したつもりが、私の手から直接飲まれて、動転した。
「そこそこ、まだ繋がってるかな」
走行中なので、目だけは前方に向けたままだったせいか、動揺は伝わらなかったらしい。
平然と運転に戻る。
こっちは心臓が跳ねあがって、相づちすら打てずにいるのに。