君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
特に目的地もないので、たまに車を停めて海岸に下りたりしながら、のんびりと南下した。



「半島の先って、島があるんでしたっけ」

「灯台で有名なとこだろ」

「灯台…」



行ってみたいです、と言うと、新庄さんは「了解」と微笑んでギアを落とした。

昼過ぎにゆっくり出てきたので、もうすでに日は傾きかけている。


窓を全開にして、潮風を浴びて、私はドライブが好きだなあとつくづく思う。

秀二とつきあっていた頃も、しょっちゅう目的地を決めずに、とりあえず車を出してもらっていた。


この、ふたりだけという空間が好きで。

オーナーの好みや習慣が如実に表れる、車というものが好きで。

愛車を転がす満足そうな横顔が好きで。

何笑ってる、と指摘されるまで、自分が笑っていることに気がつかなかった。



「新庄さんが、車好きな人でよかったと思って」

「そうじゃなかったら、惚れてなかったって?」



あぜんとした。

意地の悪い笑みを浮かべる新庄さんに、私はバカみたいに口を開いたり閉じたりするだけで、声も出せず、顔が真っ赤になっていくのを感じる。

それを見た新庄さんは、珍しいことに声をたてて笑い、私は悔しまぎれに、そうかもしれませんね、とつぶやくのがやっとだった。

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