君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
島の東端に、展望台があった。
駐車場からここまでは、歩いて20分ほどの距離。
まだ日中の名残で、空気は暖かい。
風は冷たいけれど、歩いて温まった身体には、それがちょうどよかった。
「ぎりぎり、房総が見えますね」
空気は少しかすんでいて、いつの間にか雲が集まってきていた。
新庄さんは目ざとく喫煙スペースを見つけて、そこで一服している。
近づいて、隣に腰を下ろす。
「煙草、いつから吸ってます?」
「そりゃ、二十歳だろ」
絶対、嘘だ。
じろっと見ると、高校、という短い答えが返ってきた。
「禁煙しないんですか」
社内の喫煙所も次々と縮小され、吸いづらい世の中になってきているだろうに。
新庄さんは、ちょっと考えるように首をかしげる。
「やめようと思ったこと、ないからな」
筋金入りのスモーカーだ。
気になる? と訊かれ、首を振る。
ヘビースモーカーは、なんというか、可愛いところがあって、嫌いじゃない。
そう伝えると新庄さんは、大人だな、と楽しそうに笑った。