君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
たぶん南向きの、ゆったりとしたバルコニー。

リビングの、二重サッシの重たいガラス戸を開けると、クロックスのサンダルが置いてあった。

大小の、ふたつ。


あるじゃん…。


ちょっと迷って、小さいほうを履いて、外へ出る。

タワーマンションもないこのあたりでは、17階というのはかなり高いほうで、都内とは違う、落ち着いた夜景が見えた。


いつの間にか、雨は上がっている。

じっとりと湿った雨上がりの空気が、まだ濡れている髪に冷たい。


いまさら焼きもちとか、ないけど。

新庄さんの年齢なら、これまでに、何もないほうが問題だ。


同棲だって、終わった話。

そう思っていたんだけど。


こうして、ここに来てみると、一緒に暮らしていた人の存在は、予想以上に大きい。


私は、新庄さんにとって、どういう存在なんだろう。

4つ上という年齢が、これまでになく遠く感じて、ひどく自分が子供に思えた。


手すりにひじをついて、改めてそんなことを考えていると、ガラス戸の開く音がした。

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