君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「…何考えてるか、当ててやろうか」
「ここに住んでた人のことですよ」
わざわざ当てさせるのも癪で、先に言ってやると、くすりと笑う気配がした。
「捨て忘れただけだ」
ここには出ないから。
そう言いながら、気配が近づいてきたと思うと、煙草を持った手が手すりに伸びてくる。
うなじに柔らかい熱を感じて、キスされていると気づいた。
身体が、硬直する。
何も反応できずにいるうちに、軽く音をたてて、熱は離れて。
新庄さんは、部屋へ戻っていった。
私は固まったまま、今さらなことを、考えていた。
私…。
非常事態だから、他にどうしようもないという気持ちでここへ来たけれど。
新庄さんは、どういう、つもりなんだろう。