君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
合わない、と言ってはいたけれど。

頭の切れる人間がふたりそろえば、話が進むのは早い。


1時間足らずのうちに、おおよその問題点と、現実的な改善策が、整理しきれないながらも出そろったように思われた。



「後は、私のほうでまとめておきます」



笑顔で解散宣言をした堤さんを、新庄さんは少しの間、じっと見ていた。

スピーディで中身の濃い議論から来る高揚のせいで、会議室を出ていくみんなの声は明るい。



「新庄も、ありがとう」

「いや」



みんなと別方向へ向かう新庄さんに、堤さんが声をかける。

新庄さんはそっけなく返事をすると、フロアを出ていった。




「新庄さん」



廊下で追いついて、声をかける。



「ありがとうございました」

「発言しないなら、いる意味ないぞ」



ぴしゃりと言われた。



「申し訳ありません」



思わず部下の口調になって、並んで歩く。



「体制の話は、ぴんと来ないか」

「腰が引けます…キャリアも浅いので」



実務の話ならいざ知らず、ああいう話になると、萎縮してしまう。

なんとなく、私なんかが口出しすることじゃないような気がしてしまうのだ。

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