君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「そういう立場からの声も大事だ。頭使って働いてりゃ、何かしら気づくだろう。それをシェアするのは、義務だ」
「はい」
反省しながらも、新庄さんが上司だった頃を思い出して、懐かしい気分になる。
いつもこうして、導いてくれる人だった。
その時ふと、堤さんと新庄さんの「合わない」意味が、わかりかけた気がした。
けれどそれが形になる前に、新庄さんが口を開く。
「休みは、再来週いっぱいだ」
「え」
隣を見あげると、優しい微笑み。
「行きたいところ、考えとけよ」
そう言って、手帳で私の背中をポンと叩くと、新庄さんは階段を下りていった。
…彩の話を聞こうと思っていたのに、できなかった。
再来週か。
一週間休むと言っていたから、完全フリーの土日が、2回あるってことだ。
私は、がぜん楽しみになり、行き先の候補を考えはじめていた。
「何、話してたの」
そこに、突然声をかけられて、ぎょっとする。