君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
堤さんは、人を信じない。

そこが、新庄さんとの違い。


自分がやったほうが早いと思えば、やってしまう。

うまく仕事を振り分けているようでいて、肝心なことは、絶対に人に任せない。


人の失敗は、自分で修正してしまう。


それを、楽だとか、頼りになるとか、有能だと感じる人も、いるだろうけれど。

私は、冷たいと感じる。




「なんだ…どうした」



ビルの地下、駐車場へと続く通路で、新庄さんと会った。

堤さんとのことで若干めげていた私は、それが顔に出ていたのだろう。

会うなり新庄さんが、驚いたような、心配したような声で訊いてくる。



「堤さんは、何がしたいんでしょう」

「俺をイラつかせたいんだ、気にするな」



並んで歩く私の背中を、はげますように叩いてくれる。



「イラついてますか」

「イラついてるな」



ぶっきらぼうな言葉。

それだけで気持ちが晴れてくるんだから、つくづく私は単純だ。



「優しいですね」

「最初から、そう言ってる」



思わず笑ってしまう。

本当にこの人は、たぶん自分で思っているより、ずっと優しい。

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