君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
声をかけようとしたら、新庄さんに車の陰に引っぱりこまれた。



「なに…」

「しっ」



指の背を私の口に当てて黙らせると、彩のほうをうかがい見る。

わけがわからず、私も同じ方向を見ると、彩の後ろからもう一人、現れた。


ジャケット姿の男の人。

男性が彩の手をつかみ、彩が振りほどいて逃げる。

ふたりは私たちに気づかないまま、隣りあうショッピングモールの地下へと続く通路へ、消えていった。


私はそれを、呆然と見送った。

すぐ隣で、新庄さんが「やっぱりな」とつぶやくのが聞こえる。



「知ってたんですか」



もう必要ないのに、つい小声になる。



「横浜で、ふたりを見かけたんだ。相手がわかったのは、今だ」



見覚えがあったから、社員だろうとは思ってたけど、と続ける。



「企画3部の…」

「大森マネージャーだ」




企画3部といえば、うちの部と組んで仕事をする部署だ。

新庄さんが元いた部署でもある。

大森さんとはあまり接点がないけれど、顔と名前くらいはわかる。



「でも、新庄さん…」



しゃがみこんだまま、隣を見る。

声が、自然と気弱になった。

考えこむような新庄さんの顔つきは、私の言わんとしていることに、気づいているんだろう。


大森さんって。

結婚してるんじゃ…。

< 62 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop