君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
新庄さんは、何も言わずに肩をすくめる。

してる、という意味なのか、知らない、という意味なのか。


マネージャークラスで、結婚していないほうが珍しい。

特に話題になっていなければ、既婚と考えたほうが妥当だ…。


彩…。


私はすっかり混乱して、祈るような気持ちで、彩、とくり返すしかできなかった。

おい、と頭を乱暴にかき回されて、我に返る。



「お前が動揺するな。見る限り、今大変なのは、あっちだろう」



助けてやらなくて、どうする。

そう言われて、もう、彩から言い出してくれるのを待っているなんて、できないと思った。


新庄さん、と向き直る。



「私、帰ります。せっかく来ていただいたのに…」



すみません、という言葉は、素早いキスに飲みこまれて。



「送ってく」



新庄さんはをデニムのひざをはたきながら立ちあがり、私を助け起こしてくれた。


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