君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
土曜日は、まったく頭に来るくらいの晴天で。
掃除をして、洗濯をして、近所のカフェで遅いお昼を食べた。
新庄さんは、もう浜松に着いただろうか。
お酒を飲むなら、電車なのかも。
そんなことを考えながら過ごしていたら、いつの間にか日が暮れていた。
夕食をどうしようかと思案していると、テーブルの上の携帯が震えているのに気づいた。
メールかと思ったら着信で、慌てて開く。
画面を見て、たっぷり数秒は固まった。
『着信:田崎秀二』
「久しぶりー」
マンションからすぐの改札まで迎えに行って、懐かしい声を聞いた。
「ほんと、久しぶり。元気?」
元気元気、と答える秀二は、実際ほとんど記憶と変わらない。
童顔といっていい顔立ちに、生まれつき明るい色の髪。
肉のない身体に、背だけは立派に高い。
ラフなデニムにダウンジャケットを着て、まるで学生みたいだ。
変わらないね、と言ったら、恵利はちょっと可愛くなったかも、と言ってくれた。