君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
歩いて少しの場所に、無国籍の居酒屋がある。

彩が泊まりに来た時など、たまに利用する店で、静かだけどムードがありすぎなくていい。


秀二を、そこに連れて行くことにした。



「あのさあ、お願いがあるんだけど」

「うん?」



歩きながら、言いにくそうに秀二が切り出す。



「恵利んちで、携帯、充電させて」



さっきの電話の後、切れちゃった…と情けない声を出す秀二に、思わず笑った。

ほんと、変わってない。




「いつの間に引っ越したの」

「年末。いろいろあったんだよ」



まずはビールで乾杯し、ふたりでメニューを眺める。

新庄さんのことは省いて、ストーカーのことを面白おかしく話すと、マジでーと秀二が驚いて。

その後に、ものすごく心配してくれた。


特に取り決めをしたわけではないけれど、別れてからは、お互い電話もメールもしなかった。

こうしていると、一年のブランクなんて感じないくらい、波長が合うのを実感する。

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