君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
ゼミの同期だった秀二とつきあいだしたのは、大学3年の夏だ。

就職活動の時期も一緒に過ごして、別々の会社に行った後も、3年つきあった。


明るくて、人懐こくて、ちょっとのん気な秀二は、長いこと私の生活の一部だった。



「4月に、福岡に行くんだ」

「転勤?」



そう、と秀二がうなずく。



「たぶん、当分戻ってこないから、一度恵利にも会っときたくて」



急に連絡してきたのは、そういうことだったのか。

秀二は、うちの代理店ともつきあいのあるメーカーに勤務している。

全国の主要都市に支社があり、必ずそのうちのどこかで経験を積むことになっているはずだ。



「実績残して帰ってきたら、出世コースじゃん、頑張ってね」



うん、と笑う顔は、以前より少し、頼もしくなっていたかもしれない。


2時間くらい、と思っていたら、結局4時間も話しこんで。

気づけば終電の時間になっていた。

< 73 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop