君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「大塚さんも、悪かったね。つい、かき回したくなって」
「はあ…」
なんと言ったらいいのかわからず、気の抜けた返事をする。
全部、いや半分、冗談だったのか。
でも、やっぱり半分は、本気だったんだ。
その考えを見抜いたように、堤さんが微笑んだ。
「もうしないよ、すっきりしたし」
涼しく飾ってない顔も見られたし、と笑うと、新庄さんがあからさまに嫌そうな顔をした。
堤さんは、満足げに煙を吐いて、でもさあ新庄、と続ける。
「あそこで怒る権利、お前にあるの」
少しだけ悪意のこもった視線で、新庄さんを見すえて。
新庄さんが舌打ちをして、PCを乱暴に閉じた。
無言でスツールから腰を上げる。
「行くの」
「打ち合わせがある」
ごちそうさま、と堤さんが煙草を振るのを無視して、新庄さんは出ていった。
「僕らも、そろそろ戻ろうか」
「はい…」
私は、堤さんとのことがなんとか解決を見たようで、胸をなでおろしていたけれど。
肝心の話を、新庄さんとできなかったことに、今頃気づいていた。