Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「まさか、俺のこと忘れた?」

 悪戯っぽく輝くブラウンの瞳だけが、昨日と変わらないように見えた。

「圭斗君……?」

 そうっスよ、と彼は頷く。
 やはり、予想は間違っていなかったのだ。

「ここ、空いてるっスよね?」
「あ、うん、だ、大丈夫だよ」

 見た目は違っても圭斗は圭斗だ。
 断る理由は無いのだが、紗綾はまだ混乱していた。

「ひどいじゃないっスか、紗綾先輩」

 隣に座った圭斗は傷付いたように言うが、紗綾は困惑するしかない。
 昨日見た人間を簡単に忘れるはずもない。これほど派手な外見をしているならば尚更なのだ。
 だが、昨日の時点では目立つとは言ってもこれほどではなかった。
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