Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「だって、髪の毛……」
「入学式ぐらい正装しておこうと思って」

 色が全然違うと紗綾は思うが、思い返せば不自然な黒であったのだ。十夜よりもずっと黒かった。
 ミステリアスに感じたのもそのせいだ。スプレーで染めていたのだろう。
 目印となるものが違っていれば間違ってしまうのも仕方がない。
 圭斗はどこかそれを楽しんでいるようでもあった。

「もしかして、黒い方が好みっスか?」
「あ、えっと、綺麗な色だね」

 じっと見詰められて戸惑いながらも、紗綾は思ったままのことを言う。
 何となく光が当たったらもっと綺麗なのではないかと思ったのだ。
 しかし、そんな様子を見た圭斗はクスクスと笑った。

「何か緊張してるっスね、不良は怖くて嫌いっスか?」

 昨日と同じなのに、見た目だけが食い違っている。
 けれど、紗綾が緊張するのはそのせいではなかった。
 怖いとすれば、それは彼ではなく、この場所なのだ。

< 27 / 712 >

この作品をシェア

pagetop