透明な君

「サトルくん…」

心配そうに
ヒトミが立ち上がった。

「座ってろ。ヒトミ」


口から流れる血をぐいっとワイシャツの袖で拭うとじんわりと赤黒いシミができた。


あ~あ。
こんなん見たら
オフクロがうるせぇな。

はぁ…とため息をつく。


「やってくれんじゃん?ハルキ…。超いてぇよ」


「だろうね。僕の手も痛いよ。ってゆうか痛くないと意味ないし」


「俺ルールわかってやってんだよな?…やられたらやり返すっ!!」


距離があったため
紙一重で右ストレートをかわされる。


「…ちっ!!」
舌打ちをついた。

方向を変え
再び右ストレート!


しかし
手応えはなく 肌をかすっただけだった。


くそっ!!


「お前がウソをついた時の口元の笑みが!バカにしているようで大嫌いだったんだよっ!!!」


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