【完】キセキ~君に恋した時間~
嫌だ。こんなの嘘だ。
だって昨日は生きていたのに。
唇に、美海の温もりが残っているのに。
「み、み……」
縋るように名前を呼んでみても、空虚な
空間に虚しく溶けていくだけで。
俺は泣きながら、制服に身を通した。
身内だけでひっそりと行われた葬式。
誰もが泣いているなかで、俺はもう、泣
けなかった。
泣き尽くしてしまったから。
水分が全部消えて、干からびてしまうん
じゃないのかってくらい、俺は泣いたか
ら。
ただ、虚ろな目で。