【完】キセキ~君に恋した時間~
微笑みながら、とんでもないことを言い
出した。
栄生君って……怒ったらどんな感じなん
だろう。……どうしよう、なんか急に寒
気がしてきた。
「手なんかぬかないよ~……はは……」
「そうだよね。徹くんはそんな奴じゃな
いよな。でも、一応ね」
……ああどうしよう。余計プレッシャー
なんですけど!
ほら、指も震えてきたし。もうこれで命
中率50%くらい消え去ったよ。
ああどうしよう。目の錯覚で、このバス
ケットボールが俺の心臓に見えてきちゃ
ったよ。
これがリングを潜れば、俺の命は助かり
、地面に打ち付けられた瞬間べしゃりと
……おえ、グロ。
俺は雑念を振り払うようにぶるぶると首
を左右に振って、ゴールを見据えた。
……よし!
す、と俺の指先から離れていくボール。
それは美しい放物線を描きながら──。