トワイライト
「知っていたって。そりゃあ、まあね。僕達は同じ系列の会社をそれぞれ任されている立場だからね。重要な役員会議の時などは顔合わせをするから自然と解るよ。それに僕は理子さんが社長秘書に正式に任命された時に匡史従兄(まさふみにい)さんから紹介を受けたしね。あれは確か理子さんが22歳の時だったと思う。理子さんはその当時2歳の子供を抱えたシングルマザーだった」
 と、崇晃は言った。




「そうだったんですの……」
 と言って瞳子は複雑な表情になった。




「ねえ崇晃。あの当時あなたは少なからずとっても美人で聡明な理子さんに、興味を示していたわよね?だってあの頃町村さんと夏目さんとで理子を争うようにコソコソとお話をしていたのを私良く覚えているもの」
 と瞳子が言うと




「ああ、あの頃はまだ僕も20代で若かったし町村と夏目とで誰が理子さんの心を射止めるかなんて事に夢中になっていたな。まあ、でもあれは僕にとっては友達同士の付き合いの一環だったんだ。だから別段意味はないよ。ましてや僕は理子さんに対して恋愛感情なんて全くなかったしね。ただ理子さんは本当にキレイな女性(ひと)だなって言う風には思ったけれど。まあ、その当時僕ら3人にはそれぞれに将来結婚する相手がいたからね。それにあの頃既に瞳子、君と僕とは結婚をする約束をしてたじゃないか。


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