教師Aの授業記録
いざ決着の時



―――ガラララララッ!!!





その日の放課後も、いつもと変わらず、とある教室の扉が開け放たれたのだった。


……いや。


いつもと変わらずというには語弊があるかもしれない。

いつもより30分以上は遅れていた。


そして今日はいつもと違って二人揃ってその教室にやって来たのだった。

部屋に入って来た二人の姿を見咎め、教壇に居た人物が彼らに向かって叫んだ。


「遅刻は厳禁だ!さっさと席に着きたまえ」


しかし、その姿を目にした田中と山下は扉付近で驚いたように身体を硬直させていた。


「……何を二人揃って驚いている?」


教師Aは怪訝そうに訊く。


「…いやー。まさか昨日の今日で来ているとは思わなくて」


田中は正直な理由を答えた。

それでも半信半疑でいつもの教室に来てみたわけだが…。


教師Aは不思議そうに首を傾けた。


「…はて。昨日何かあったか?」


純粋に疑問に思っている様子で訊いてくる。

演技には見えない。



田中は隣の山下絵里に耳打ちをした。


「…お前の兄貴、実はちょっと頭がボケてきてるだけじゃねーのか?
俺の隣ん家の爺さんより酷いぞ」


「そんなワケ無いでしょう。
兄さんはまだ23ですよ」


山下は眼鏡を冷たく光らせて田中を見返した。

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