散華の麗人
そして、口を開いた。
「香柚姫。貴方の母は権力で我が故郷、“梁麗”を滅ぼした。」
「母上が梁麗を?……あんなの、既に権力者の支配によって壊滅状態だったじゃろ。それに、清零国領土の1部に過ぎない。戦争とは犠牲もあるものだ。」
「そうだ。誰もがそう言って見放した。愚かな人間ばかりだ。」
リアンは吐き捨てるように言う。
一正が何か言いかけたが、風麗が黙って阻止した。
「元は平和な国だった故郷を低脳な清零国王が売り、強欲な妃が踏み荒らし、奪っていく。そして、尚、家族だ絆だとぬかす。全く、偽善者ですね。それとも、貴方は自分の周りさえ良ければ満足なのでしょうか。」
その表情にリアンの本心を見た気がした。
大切なものを奪ったのが許せないのか、綺麗事を言う辻丸が許せないのか。
唯、根底に消えぬ憎悪を感じた。
「貴方とこれ以上関わる気はない。」
はっきりと言うと一正と共に進んでいた方向へ足を踏み出した。
「失礼。」
そう言って、進む。
「あ。」
一正は我に返ってリアンを早足で追う。
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