散華の麗人
そして、手紙を懐に入れた。
「読まないのか?」
「はい。」
(……私にはその覚悟はない。)
風麗はどこか迷いがあるような表情で答えた。
「大切な内容かも知れないやろ。」
「……」
一正に風麗は何も言わずに手紙を差し出した。
(見なくてはならないのはわかってる。)
風麗はそう思いながら一正に押し付ける。
「ならば、貴方が開けて下さい。」
「わし宛ではないし、他人の手紙の封を切るような趣味はない。」
「そうでしょうね。」
風麗は差し出した手紙を引っ込めた。
「誰なんや?両親……なわけないし。」
(死んでるもんな。)
「師範です。」
「師範!?」
(いたのか!)
一正は驚いた表情をした。
「とはいえ、今は違いますが……」
風麗は再び目を伏せた。
「?」
一正は怪訝そうな顔をする。
「私は彼の元に幼い頃、弟子入りをしたのです。」
そう言うと、風麗は昔を思い出した。
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