散華の麗人
初めて師範に会ったのは両親を亡くした後だった。
風麗は毎日、猛獣が多く出る山奥で1人で修業をしていた。
ある日、到底敵わない獣と遭遇した。
『来い。』
風麗は臆することなく立ち向かう。
しかし、相手に敵わず、獣に捕われてしまった。
そんな時だ
“ザシュッ”
肉が裂ける音とともに、風麗を掴んでいた獣の腕が落ちた。
『!?』
突然の出来事に風麗は辺りを見回した。
気配はなく、何かによって獣が切り刻まれていく。
(奇術師か?)
そう思っていると、何かが上から地上へ着地した。
風麗は警戒している。
『ふぅ……』
警戒していた“何か”は間抜けな溜め息をついた。
正直、風麗は呆気にとられた。
(油断させる作戦か?)
それにしては、こちらに見向きもしない。
『おい』
見兼ねて声をかけた。
相手はこちらを振り返る。
幼い顔立ちの美青年にも勝ち気な女にも見える。
女顔だとか童顔ではなく、美しい、そう思った。
それは強さ故にか、顔立ちか。
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