散華の麗人
雅之は驚きもせずに“ほう”と頷く。
「相当な手練だな。」
「それはどうも。身に余る評価だ。」
青年はやる気がなさそうだ。
「次は貴様の番だ。」
「そうだな。何が知りたい。」
雅之に青年が問う。
「貴様の主の目的、何者なのか。そして、貴様自身のことだ。」
「俺の?ふは、ははっ」
「何がおかしい。」
「そんなのを知ってどうする。」
青年は面白そうに笑う。
「興味本位だ。」
雅之は生真面目な表情をする。
取引をうやむやにされたくないという意思が見える。
「そう殺気立たずとも、はぐらかしたりしない。」
青年は言う。
「俺は柳って者だ。」
柳と名乗る青年は言う。
雅之は予想と違う名前を聞いて少しの間考える。
(奏国の栁晴ではないかと思ったが。)
その疑問に執着することはそこでやめた。
「その髪色と目。竜華国の者か?」
「いいや。その近くだが、俺の国は既に滅んだ。」
柳の表情は暗くない。
気怠げで自嘲気味だ。
「奏国、か。」
「知ってるんだ。」
「さぁな。」
雅之ははぐらかせる。
「確証がないだけだ。」
「ははっ」
柳は笑う。
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