散華の麗人
すぐ横を女が横切る。
柳はその女から主を守るように剣技を繰り出す。
女は槍を振り翳す。
「畝!」
幼名で呼ぶ声に雅之は顔を顰め、市女笠の者へ攻撃を仕掛ける。
「馬鹿国王。何故此処に居る。」
冷静に背後へ問い掛ける。
「訳ありでな。ジジィに会いに行く支度してん。そしたら、裏山の方が騒がしゅうてな。」
「こういう勘だけは褒めてやる。」
「いやぁ、あんたに褒められると照れる通り越して気味悪いわぁ。」
陽気に笑う声は細川国王……一正のものだ。
そして、柳と対峙している女は風麗だと目視した。
「細川国王ともあろう者がここまで軽率な行動をするとは。」
柳は嘲笑う。
「仕えているあんたもあんただ。」
「ほざけ。」
風麗は槍を振り回す。
普段は持ち歩いていないことから、恐らく武器庫から調達したのだろう。
「何故、細川へ仕える?」
そう問うのは“こちらへ来い”という意味合いだろう。
「私が望む世界が此処にある!」
「民の為か。」
「そうだ。」
風麗は真っ直ぐ見据える。
「変わらないな。その真っ直ぐな態度。どこまでも、あんたは……」
(眩しい。)
柳は静かに言う。
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